「インフォームドコンセント・ガイドライン」についての見解
第1 本ガイドラインの目的
本ガイドラインは、美容医療におけるインフォームド・コンセントのあり方について、医師及びその他の美容医療従事者の診療情報の提供等に関する役割や責任の内容の明確化・具体化を図るものであり、美容医療従事者が診療情報を積極的に提供することにより、美容医療を受ける者(以下「患者」といいます)等が医療行為の内容を十分理解し、医療従事者と患者等とのより良い信頼関係を構築するとともに、後日の紛争を防止することを目的とするものです。
本ガイドラインは、美容医療従事者がインフォームド・コンセントに関する職責を全うするために留意すべき事項について一つの指針を示すものであり、美容医療従事者が、本ガイドラインに則って積極的にインフォームド・コンセントを行うことを促進するものです。
第2 定義
-
- 「診療情報」とは、診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、美容医療従事者が知り得た情報をいいます。
- 「診療記録」とは、診療録、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、紹介状、退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約その他の診療の過程で患者の身体状況、病状、治療等について作成、記録又は保存された書類、画像等の記録をいいます。
- 「診療情報の提供」とは、①口頭による説明、②説明文書の交付、③診療記録の開示等具体的な状況に即した適切な方法により、患者等に対して診療情報を提供することをいいます。
- 「診療記録の開示」とは、患者等の求めに応じ、診療記録を閲覧に供すること又は診療記録の写しを交付することをいいます。。
第3 インフォームド・コンセントについて
- 患者は、医師及びその他の美容医療従事者から自らが受ける美容医療等の行為の目的、方法、危険性、予後等につき、十分理解できるまで説明を受けた上で、医療行為に同意し、選択し、あるいは拒否する権利(自己決定権)があります。
- 医師及びその他の美容医療従事者は、その当時における安全かつ最善の美容医療を提供し、患者の自己決定権を実効性のあるものにするために、誠意ある分かりやすい診療情報の提供、助言、協力、指導を行うものとします。
- このように患者が十分に説明を受けた上で、医療行為を受けることに同意することをインフォームド・コンセントと呼ぶものとします。
第4 インフォームド・コンセントを実施する対象及び対象者について
- 1 原則として全ての医療行為についてインフォームド・コンセントを行うものとします。
- 2 他の医療機関で既に診療情報の提供が行われている場合であっても、医療行為を行う際に改めてインフォームド・コンセントを確認するものとします。
- 3 患者が未成年者等で判断能力がない場合には、診療中の診療情報の提供は親権者等の法定代理人に対してもインフォームド・コンセントを行うものとします。
- 4 生命や重大な障害にかかわる緊急時には、本人や家族等に対するインフォームド・コンセントを行わずに、適切と判断される医療行為等を直ちに実施することができるものとします。 この場合は診療録などにその旨を記載し、事後に診療情報の提供を行うものとします。
第5 診療情報の提供者について
- 診療情報の提供は原則として主治医または主治医の指揮のもと、指示医、担当職員が行うものとします。
第6 診療情報の提供の方法について
- 患者等に対する説明は、患者等から理解を得やすいように、丁寧に行うよう努めるものとします。 また、診療情報の提供の前提として診療記録の正確性の確保にも努めるものとします。具体的には、適正な医療を提供するという利用目的の達成に必要な範囲内において、診療記録を正確かつ最新の内容に保つよう努めるものとします。
第7 診療情報の提供の内容について
- 1 診療情報の提供について
- 医師及びその他の美容医療従事者は、原則として、診療中の患者に対して、次に掲げる事項等について丁寧に診療情報の提供するものとします。
- ①現在の症状等
- ②処置及び治療の方針
- ③手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要、危険性及び合併症の有無
- ④治療目的以外に、臨床試験や研究などの他の目的も有する場合には、その旨及び目的の内容
- 2 その他の情報の提供について
- 医師及びその他の美容医療従事者は、原則として、診療中の患者に対して、実施しようとする施術に要する費用等(当該費用によって受けることができる施術の回数や範囲、保険診療での実施の可否等も含む。)や当該施術に係る解約条件について丁寧に説明するものとします。
第8 診療情報の提供にあたっての留意点について
- 1 診療情報の提供に当たっては、品位を損ねる又はそのおそれがある情報及び方法を用いて説明してはならないものとします。
- 2 公の秩序若しくは善良の風俗に反する情報又は虚偽若しくは誇大な情 報を用いた説明もしてはならないものとします。
- 3 施術の有効性及び安全性に係る説明に当たっては、施術の効果の程度には個人差がある旨を患者に対して、丁寧に説明するように努めるものとします。
- 4 即日施術の必要性が医学上認められない場合には、即日施術を強要すること等の行為は厳に慎まれるべきであり、即日施術を受けることを希望する者については、十分に説明を行うとともに、熟慮するために十分な時間を設けた上で、施術を実施するものとします。
- なお、即日施術の必要性については、患者の希望等も踏まえ、医師により総合的に判断されるべきものです。
- 5 診療情報の提供は、落ち着いた雰囲気で、プライバシーが十分保たれる場所で行うよう努めます。
- 6 専門用語の多用を避け、患者等が理解できる言葉で診療情報の提供をするものとします。必要に応じて理解しやすいように資料や図などを活用するよう努めるものとします。
- 7 医師及びその他の美容医療従事者は、患者の同意を得ずに、患者以外の者に対して診療情報の提供を行うことは、守秘義務に反し、法律上の規定がある場合を除き認められないことに留意します。
第9 診療情報の提供を拒み得る場合
- 1 美容医療従事者は、診療情報の提供が次に掲げる事由に該当する場合には、診療情報の提供の全部又は一部を提供しないことができます。
- ①診療情報の提供が、第三者の利益を害するおそれがあるとき
- ②診療情報の提供が、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき
- ※個々の事例への適用については個別具体的に慎重に判断することが必要となります。
- 2 医師及びその他の美容医療従事者は、診療記録の開示の申立ての全部又は一部を拒む場合には、原則として、申立人に対して文書によりその理由を示すものとします
第10 他の医療従事者からの求めによる診療情報の提供について
- 1 医師及びその他の美容医療従事者は、患者の診療のため必要がある場合には、患者の同意を得て、その患者を診療した又は現に診療している他の医療従事者に対して、診療情報の提供を求めることができるものとします。
- 2 診療情報の提供の求めを受けた医師及びその他の美容医療従事者は、患者の同意を確認した上で、診療情報を提供するものとする。
第11 診療情報の提供に関する苦情処理及び規程の整備について
- 1 医療機関の管理者は、診療情報の提供に関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めるものとする。
- 2 医療機関の管理者は、都道府県等が設置する医療安全支援センターや医師会が設置する苦情処理機関などの患者・家族からの相談に対応する相談窓口を活用するほか、当該医療機関においても診療情報の提供に関する苦情処理の体制の整備に努めるものとする。
- 3 医療機関の管理者は、診療記録の開示手続等を定めた診療情報の提供に関する規程を整備し、苦情処理体制も含めて、院内掲示を行うなど、患者に対しての周知徹底を図るよう努めるものとする。